熱交換換気システムとは、住宅に設置が義務付けられている24時間換気のうちのひとつで、第一種換気を指し、換気扇で給気と排気をします。
その他には給気・排気方式の組み合わせによって、第二種・第三種換気システムもありますので、各換気システムによる省エネ性、快適性、フィルターの有無やダクトレスの良し悪し、寿命、導入費用などの違いを見ていきましょう。
コラムのポイント
- 24時間換気には第一種換気・第二種換気・第三種換気という3つのシステムがあります。
- 熱交換換気は第一種換気に組み合わせるための換気システムです。
- 戸建て住宅では第一種換気、または第三種換気が採用されます。
目次
室内快適性と家の寿命を左右する「換気方式」|第一種・第二種・第三種換気の違い
新築の際、決めなくてはならない重要なことのひとつに、建物と家族の健康維持に大きく影響する換気の方法の選択があります。特に、高気密・高断熱住宅にする予定である場合には換気方式の選択が重要です。
近年、健康維持や生活環境の快適化と家庭での消費エネルギーの削減を目的として、住宅の高気密・高断熱化が進められています。その結果、省エネ住宅が増加するという良い面と同時に、シックハウス症候群という問題も生じました。
シックハウス症候群とは、建築資材に含まれる有害物質を揮発させる化学成分や、カビの胞子やダニの死骸によって空気が汚染された家に住む方へ発症する健康被害を指します。
本来の日本の住宅は、高温多湿な気候による悪影響を受けないよう、通気性の高い造りでした。窓や隙間などからの自然換気によって、汚れた空気が留まる心配がなく、シックハウス症候群のような問題も発生しなかったのです。
ただ、住人の健康維持と快適性、省エネを同時に実現する為には、最適な室温を維持しやすくする断熱性と気密性を高めることも求められます。その上で、シックハウス症候群のような空気環境による問題を解決する為には、気密性を維持したまま換気をすることが必要です。
そこで、住宅の断熱化・気密化を円滑に進める為、24時間換気システムの導入を義務づけるというシックハウス症候群への対策が2003年に実施されました。
画像出典: 改正建築基準法 – 国土交通省
24時間換気の働きは、有害な化学物質を室内に留めないことだけではありません。常に適切な湿度を維持することによって、多湿によるカビやダニの発生を防ぎます。
さらに窓を開けたり、排気ファンだけの換気扇を使用したりした時とは違い、黄砂や花粉も侵入しません。
24時間換気システム「第一種換気」「第二種換気」「第三種換気」の違い
24時間換気システムには第一種換気・第二種換気・第三種換気の3種類があり、どの方法であっても、建築基準法においての24時間換気の義務を果たせます。どのような違いがあるのか、それぞれの特徴を確認していきましょう。
第一種換気
給気と排気を換気扇でする方式です。熱交換器を付けると排気から取り出した熱と湿気を給気した空気に移して室内温度を一定に保てるので、真冬や真夏には冷暖房費の節約にもつながります。
戸建て住宅の快適化、建物と家族の健康維持には最も効果的な換気方式です。
第二種換気
換気扇で給気、自然換気で排気をする方法です。強い力で空気を採り込み、出ていく空気は抑えられるので室内の気圧が高まり、外部からの菌や汚染物質が内部に侵入しにくくなります。
病院の手術室や精密機器、薬品などの工場に使われることが多く、排気が必要な水回りがある一般的な住宅で採用されることはほとんどありません。
第三種換気
換気扇で排気、自然換気で給気をする方法です。各部屋で給排気をする必要がありますが、多くの戸建て住宅やマンションで採用されてきました。
全熱交換換気システムが搭載された第一種換気と違い、換気による室温の変化があり、天候に左右されることがデメリットです。
第一種換気と第三種換気の違いを比較
戸建て住宅やマンションなど、一般的な住まいに使われる換気方式は、第一種換気と第三種換気です。違いを比較してみましょう。
第一種換気 | 第三種換気 | |
排気 | 換気扇 | 換気扇 |
給気 | 換気扇 | 自然換気 |
フィルター | 有と無がある | 有 |
メンテナンス | メーカーによる違いが大きい | 半年~2年に1度フィルター交換 |
導入費用 | かさむ | 抑えられる |
換気システムの電気代 | かさむ | 抑えられる |
冷暖房の電気代 | 抑えられる | かさむ |
住宅全体の省エネ性 | 高い | 低い |
室温変化 | ほとんどない | ある 特に冬は寒い |
天候による影響 | ない | ある |
「熱交換換気システム」とは
室内の空気を排出する際、吸収した空調熱を外気に混ぜて室内に送り込む仕組みが熱交換換気システムです。(熱交換器システムや熱交換システムと表記される場合もあります。)
排気と給気を個別にしながら熱を交換できることが特徴です。排気すべき室内の空気は外に流れ出ていき、新鮮な空気は室内にとり込まれます。
熱交換換気システムのメリット① 省エネにつながる
冬に熱交換換気システムで換気する際、排出されるのは熱が取り除かれた空気です。この熱が冷たい外気に混ざってとり込まれるので、給気によって室温が急激に下がることがありません。その結果、暖房効率の低下を防げます。
一方、窓を開けてする空気の入れ替えは、冷たい外気が入り込み、室内の温度を低下させる換気方法です。その結果、暖房の効率が低下します。
熱交換換気システムでの換気は、窓の換気と比較すると、急激な室温の低下につながりません。その結果、電気やガスの節約ができ省エネにつながります。
熱交換換気システムのメリット② 外気温や天候に関わりなく換気できる
冬は窓を開けて換気すると冷気が、夏は太陽熱が室内に入ってくるので、冷暖房の効率が低下します。心地よい風の時は良いのですが、強風で窓が開けられない日もあるでしょう。
また、雨の日に窓を開ければ室内の湿度が上がって、逆効果になってしまうことさえあります。
一方、天気の良さや外気温、さらには窓のない部屋、窓を開けられない周辺環境であっても、換気ができる仕組みが熱交換換気システムです。
2つの熱交換換気システムの種類の特徴と違い
熱には温度を変化させる顕熱と、湿度を変化させる潜熱があります。顕熱は温度計で測れる熱です。潜熱は、個体から液体、液体から個体、液体から気体、気体から液体、個体から気体という5つの変化がおこる際に発生する熱を指します。
熱交換換気システムにはこの熱の性質の違いを利用した全熱交換器と顕熱交換器という2種類がありますので、それぞれを確認していきましょう。
顕熱と潜熱の両方を換気する全熱タイプの交換器
全熱交換器の働きは、排気ファンと換気ファンによって、換気と同時に熱の移動を調整して、外気温による室温や湿度への影響を抑え、快適な環境を維持することです。
排気ファンだけの換気扇では窓を開ける必要がありますが、全熱タイプの交換器には換気ファンもついているので窓を開ける必要がありません。その結果、気密性の高さを妨げることなく換気できます。
室温にも私たちの体感温度にも影響を与えるのは湿気の熱を蓄える働きです。夏は湿度が高いと室温も体感温度も上がり、より蒸し暑く感じます。一方、全熱交換器で湿気が排出された室内は、湿度が下がりカラッとして耐えやすい暑さです。
体感温度に影響する顕熱タイプの交換器
熱だけを交換する給気と換気が顕熱交換器のシステムで、外気温が室温に与える影響を抑える働きは全熱交換機と同じです。ただ、顕熱交換器は熱だけを給排気する為、冬でも室内が乾燥し過ぎることがありません。
全熱タイプの交換器が使われていると、夏は爽やかなのですが、冬は湿気を排出して湿度が下がります。その結果、熱を蓄える働きが低下して室温も体感温度も下がり、寒く感じられることが全熱タイプの交換器の寒冷地での問題点です。その為、寒さが厳しい地域では、顕熱タイプの交換器が多く採用される傾向にあります。
「熱交換換気システムはいらない」と後悔する理由と対策
「熱交換換気システムはいらない」「導入しても後悔する」と言われる理由には、費用や間取りへの制限が挙げられます。
初期費用がかかる
第三種換気と比べて、熱交換換気システム付きの第一種換気は、設備機器・ダクト配管その他施工費がかかります。
さらに、国土交通省による改正建築物省エネ法の概要では、全熱交換器の採用率が80パーセント以上の場合のみ、省エネルギー効果を見込むことができるとされています。
従ってすべての全熱交換器が省エネ計算の対象になるとは限りません。
全熱交換機の確認項目
画像出典:改正建築物省エネ法の概要 – 国土交通省
熱交換換気システムは製品によって、製品自体の価格も導入費用も、使い始めてからのコストも大きく変わります。そのため、製品を選択する際は、導入費用と使い始めてからのコストと、メーカーによる製品の性能や価格を比較検討することが大切です。
ダクト配管によって間取りに制限が出ることも
ダクト配管に使われる場所やダクト配管の方法によっては、間取りに制限が出ることかあります。ただ、新築時の間取り計画の作成を進める際の熱交換換気システムの選び方や、熱交換換気システムのダクトの設置方法によって、間取りへの制限は抑えられます。
定期点検・メンテナンス・交換が必要
熱交換換気システムには不織布などのフィルターが使われていますが、1~2年程度で埃によって目詰まりします。本来の全熱交換器の果たす働きは50~70%程度の熱回収率と70~90%程度の熱交換率です。
しかし、給気や排気の能力が低下すると、結露が発生して溜まったほこりと混ざってカビが発生、さらにカビを餌にしてダニも発生してしまいます。
メンテナンスが必要ない熱交換換気システムはありませんが、メンテナンスの頻度やしやすさは製品によって異なります。
その為、費用やダクトの設置方法、性能の高さと並んで、メンテナンスの方法や頻度についても、製品選びの際には検討することが大切です。
「熱交換換気システム」に関するよくある質問
換気システムに関して、疑問に感じられるかもしれない点について説明します。
Q ダクト配管があれば自然給気口はいらない?
自然給気口から冷気が入らないか心配な方もいらっしゃると思いますが、自然給気口がないと、室内が標準大気圧より圧力が低い状態に状態となってしまい、効率良く換気がされなくなってしまいます。
その為、ダクト配管があっても自然給気口は必要です。
Q 熱交換換気システムの寿命(耐用年数)はどのくらい?
換気ファンのモーターは10〜15年で交換時期を迎えます。
ダクト配管の継ぎ目に使われているダクトテープは20〜30年で交換が必要です。適切な場所に設ける点検口が、交換時のコストを抑えます。
熱交換換気システムのデメリットが解決されるG-Air全館空調システム
熱交換換気システムには、導入費用と月々の電気代が嵩む、メンテナンスが大変などの問題点があります。ただし、熱交換換気システムにハウジングエアコンを組み合わせ、全館空調にするとこれらのデメリットを解決できます。
導入費用
熱交換換気システムの導入費用は製品によって大きく変わり、50〜200万円という幅があります。加えて熱交換換気システムには冷暖房の働きはないので、室温調整の為のエアコンが必要です。
全館空調の導入費用は100~300万円で、全館空調に換気機能はないので、換気システムと組み合わせる費用がかかります。
G-Airは、優れた性能を誇るガデリウス社の熱交換換気システムと、ダイキンのハウジングエアコンの組み合わせで、一般的な全館空調と熱交換換気システムの組み合わせの6~7割程度に導入費用を抑えられます。
省エネ性
暮らし始めてからの月々の電気代はおよそ6,000円~8,000円です。ただ、この金額は電気料金が上がり続けている為、さらに増える可能性は否めませんが、エアコンと第三種熱交換システムとの組み合わせの住宅より電気代を抑えられます。
ガデリウス社の熱交換換気システムはZEHプラスワンシステムとしてSIIから認定されています。
メンテナンス
G-Airは簡単にメンテナンスができるように設計されています。ひとつは熱交換換気システムにもエアコンにも必須であるフィルターの掃除が手軽であること、もうひとつは長期的に見た時、片方だけの交換ができることです。
熱交換換気システムとエアコンは個別に制御されている為、壊れた方だけを交換できるので費用を抑えられます。
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熱交換換気システムはいらない、後悔するという意見も聞かれますが、換気は家の中の空気を清潔に維持し、家族の健康を守る為に必要不可欠です。
ただし、換気と同時に室温が維持しにくくなってしまうと、冷暖房の効率が低下して快適性が損なわれます。快適な室温にする為には過分なエネルギーを消費するので、省エネ性も低下するでしょう。
家族の健康が維持される暮らしに、熱交換換気は有効なシステムですが、同時に快適な環境を調える為には、適切な温度調節が必要です。この2つを効率よく組み合わせることが、導入費用や月々の電気代を抑えながら理想的な空気環境の家を実現することにつながります。
新築時の熱交換換気システムや空調の方法について疑問に思うことがありましたら、お気軽にご相談ください。間取り計画と合わせて快適な環境が調う家を創っていきましょう。
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